Current Location: Home » Full Text Search
Your search : [ author:近藤芳美] Total 14 Search Results,Processed in 0.091 second(s)
-
13. 一歌人の中国紀行(その十四)
十四 武漢·上海五月十三日。列車の寝台に眼を覚ます。宜昌を出て襄樊を迂回し武漢に向う夜行車である。中国本土の中心部を旅していると言えよう。カーテンを開くと、車窓に、みどりの段々畑の連なる丘を越えて夜明けの茜が今しも空にひろがろうとしている。午前五時過ぎなのか。畑はどこまでも美しく耕されてつづく。わたしたちは再びまどろもうとする。やがて朝となる。明るい朝である。車窓は一面に黄に熟れた麦畑となる。空は
Author: 近藤芳美 Year 1982 Issue 11 PDF HTML
-
14. 一歌人の中国紀行(その十一)
十一 重慶五月十日、夜の明け、成都から重慶に向う列車の寝台に目覚める。激しい雷雨である。カーテンを引くと、まるで無数の火柱のような稲妻が、絶え間なく闇一色の車窓をめぐる。まだ五時である。コンパートメントの中は蒸し暑く、それに、昨日から腫れて来た右足の甲がしきりに疼く。化膿したのであろうか。半身を起し、旅行鞄から取り出してヨードチンキを塗る。妻もいつか醒めているのであろう。窓の上の小さな扇風機だけが
Author: 近藤芳美 Year 1982 Issue 8 PDF HTML