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Your search : [ author:近藤芳美] Total 14 Search Results,Processed in 0.084 second(s)
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2. 一歌人の中国紀系行〈その二〉
二、長城と十三陵五月二日。朝の五時半に目を覚し、窓のカーテンを引く。北京の、復興門外大街に臨む燕京飯店六階の部屋である。深く眠ったと思う。わたしたちのこれからの長い旅の第一夜でもある。北京もまた目覚めたばかりなのか。朝明けの街は白々と乾き、その通りを、街路樹を吹き撓ませながら風が吹きとよむ。風が強いようである。白い、大型のトロリーバスが来ては人を乗せ、また、自転車の列がしきりにつづく。みな、灰色と
Author: 近藤芳美 Year 1981 Issue 11 PDF HTML
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4. 一歌人の中国紀行〈その四〉
四 北京から西安黄沙の今日は晴れた街の朝が明ける。六時半起床。北京の第四日目であり、今度の旅の、同じく北京の最後の一日ともなろうとする。四階の食堂に降りていく。中国料理の朝食だが、その淡い粥の味にも馴れようとする。いくつかの皿のうち、今朝は油条というのが添えられる。脹らした小麦粉を油で揚げたものである。街頭で売られ、市民が日常愛好する食い物の一つという。八時半、いつものように邱さんたちが迎えに来て
Author: 近藤芳美 Year 1982 Issue 1 PDF HTML
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7. 一歌人の中国紀行〈その七〉
七、昭陵、乾陵、茂陵五月六日、西安の第二日である。六時前起床。わたしたちの宿舎「西安人民大厦」はまだ物音もなく静まっている。その廊下を伝い食堂に行く。淡い、緑の色をした粥に味噌漬けの瓜など、やや、旅疲れをした朝の懶さに旅愁の思いを誘う。八時に、案内の王さんがにこにことした笑顔で迎えにあらわれる。今日は二台の、黒塗りの上海製国産乗用車である。西安の街は朝から夏を思わせる日射しが明るい。その市街を、大
Author: 近藤芳美 Year 1982 Issue 4 PDF HTML
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9. 一歌人の中国紀行〈その九〉
九成都にて·一五月八日、成都の、「錦江賓館」六階の一室に朝を目覚める。広壮なホテルには物音もない。まだ暗い、中庭を隔てた向いの一棟が食堂なのか、そこだけにいくつかの窓がカーテン越しに灯ともっている。食堂に通う廊下をつたう。朝早い出立のアメリカ人らの幾グループかが食事をしている。軽装の二人だけの同じ白人の男女もいる。何の旅なのか。わたしたちもまた中国に来て一週間になろうとする。遠い地にある感傷が、淡
Author: 近藤芳美 Year 1982 Issue 6 PDF HTML