九成都にて·一五月八日、成都の、「錦江賓館」六階の一室に朝を目覚める。広壮なホテルには物音もない。まだ暗い、中庭を隔てた向いの一棟が食堂なのか、そこだけにいくつかの窓がカーテン越しに灯ともっている。食堂に通う廊下をつたう。朝早い出立のアメリカ人らの幾グループかが食事をしている。軽装の二人だけの同じ白人の男女もいる。何の旅なのか。わたしたちもまた中国に来て一週間になろうとする。遠い地にある感傷が、淡...
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九成都にて·一五月八日、成都の、「錦江賓館」六階の一室に朝を目覚める。広壮なホテルには物音もない。まだ暗い、中庭を隔てた向いの一棟が食堂なのか、そこだけにいくつかの窓がカーテン越しに灯ともっている。食堂に通う廊下をつたう。朝早い出立のアメリカ人らの幾グループかが食事をしている。軽装の二人だけの同じ白人の男女もいる。何の旅なのか。わたしたちもまた中国に来て一週間になろうとする。遠い地にある感傷が、淡...