十四 武漢·上海五月十三日。列車の寝台に眼を覚ます。宜昌を出て襄樊を迂回し武漢に向う夜行車である。中国本土の中心部を旅していると言えよう。カーテンを開くと、車窓に、みどりの段々畑の連なる丘を越えて夜明けの茜が今しも空にひろがろうとしている。午前五時過ぎなのか。畑はどこまでも美しく耕されてつづく。わたしたちは再びまどろもうとする。やがて朝となる。明るい朝である。車窓は一面に黄に熟れた麦畑となる。空は...
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十四 武漢·上海五月十三日。列車の寝台に眼を覚ます。宜昌を出て襄樊を迂回し武漢に向う夜行車である。中国本土の中心部を旅していると言えよう。カーテンを開くと、車窓に、みどりの段々畑の連なる丘を越えて夜明けの茜が今しも空にひろがろうとしている。午前五時過ぎなのか。畑はどこまでも美しく耕されてつづく。わたしたちは再びまどろもうとする。やがて朝となる。明るい朝である。車窓は一面に黄に熟れた麦畑となる。空は...