Current Location: Home » Full Text Search
Your search : [ author:石中元 え·高栄生] Total 24 Search Results,Processed in 0.104 second(s)
-
1. 虚報(假报道引起的……)
この山里で、選挙で選ばれなかった郷長は、彼が初めてだ。いま、彼は、なんとも言いがたい複雑な気持ちで寝具をかたづけ、旅立ちの用意をしている。北京ジープが玄関の外で、出発を促している。二年前に農業大学を卒業したあと、彼は熱い思いを胸いっぱいに抱いて、この貧しい村にやってきた。自ら望んでのことだ。リュックに手提げのあみ袋。袋には歯みがきセット、せっけん、それに経済管理学の本が数冊入っている。きょう、彼は
Author: 石中元 え·高栄生 Year 1990 Issue 8 PDF HTML
-
2. 褒賞金
夕飯どき、ここの廊下は煙と湯気がもうもう立ちこめ、米をとぐ者、菜っ葉を洗う者、なべをこそげるやら、火を起こすやら、行ったり来たりで、うっかり歩けないほどのにぎにぎしさだ。トントントン……野菜をきざみながら、私は隣の魏さんの家のおかゆのなべの番をしている。魏さんの奥さんは家の中で子供を叱っていて、手がはなせないのだ。「パパ!」栄栄が階段をかけ上ってくるなり、耳に口を寄せてこっそり言った。「魏さんの小
Author: 張英 え高栄生 Year 1983 Issue 7 PDF HTML
-
3. 残された原稿
田光光は、なすこともなく部屋の中に立っている。昨日、父は元気だった。気に入りの作家のものを読んで、ほめたりしていた。それが今朝早く手洗いに立って倒れた。脳卒中はおそろしい。さいわい発見が早く、向かいのドアに住んでいるのが内科の医師だったので、「勝手に動かしてはいけない、家の中で応急手当をします」と言ってくれた。たちまち家の中が一変し、救急車でかけつけた医師と看護婦で部屋の半分がいっぱいになった。父
Author: 張欣 え·高栄生 Year 1987 Issue 8 PDF HTML
-
4. 祖父
汽車での八時間は、車両の連結部に立ったままで、食堂車どころかトイレにも行けず、人の肩に押されて片足が宙に浮いても身動きもできなかった。それからまたバスで四時間、缶詰めのいわしになって、やっと大晦日のうちに私は郷里にたどりついた。年越しには一家がそろわなければならないという、何千年らいの習慣のせいで、こんな苦行をさせられる。家には、父、母、弟二人、妹、八十三の祖父がいるが、北京にいる私のところへ、し
Author: 韶華 え·高栄生 Year 1987 Issue 12 PDF HTML
-
5. 路地裏
わたしは悔んだ。今晩は、もうすこし彼に送ってもらえばよかったのに。霧雨はかなり前にやんだが、寒風は吹きつのる一方だ。路地[注释1]をはさんでいる両側の壁は、暗闇の中でおどろおどろしく立ちはだかり、薄気味が悪いといったらない。まるでジリジリとわたしに迫ってくるようだ。心臓がドキドキし、呼吸が荒くなる。寒さのせいか、恐怖のためか、どうしても震えがとまらない。わたしは決して度胸がないほうではないのだ。あ
Author: 厳明 え·高栄生 Year 1988 Issue 3 PDF HTML
-
6. 責任のがれ
夫婦が同居できるように[注释1]という配慮のおかげで、わたしはA地からC市に転勤した。市政府工業部門の主任[注释2]は、わたしの紹介状[注释3]を読むと、ひざをたたいて言った。「よろしい。市農業機械第一工場にいってもらおう。あそこは、いまちょうど技術陣が弱くてね」わたしはあわてた。「主任、わたしは製紙技術を学んだんですよ」「なんだって?」主任は、はじめて顔をあげ、まじまじとわたしを見つめてたずねた
Author: 彭学甫 え·高栄生 Year 1988 Issue 4 PDF HTML
-
7. 杭州路10号
ことしの夏は、重い夏だった。仕事がなくてぶらぶらしている日数が長びくにつれて、あてのない退屈な生活が、なんとなくあたりまえのようになっていた。もちろん、これは、あの日以前のことだ。それまでにもいろんなことがあったが、べつに自分を変えるほどではなかった。それは、人間だからしゃんとしているべきだと思う。だが、子供のとき母からあんなに沢山の「おはなし」を聞かせてもらったのに、いまだに一日じゅうだらだらし
Author: 于徳北 え·高栄生 Year 1988 Issue 8 PDF HTML
-
8. 一分間
「彼が死んだのは、わたしのせいです」誰に聞かれても、彼女はこう答える。人目をさけることもしない、事実をかくすこともしない。ハッとするような美人、すべてはそのためなのだ。上品で、気高くて、世のそしりを買うほどに美しいから。雪のように明るい螢光灯がまぶしい。その銀色の光の下で見ると、彼の顔はキラキラ輝き、思いやりの心が伝わってくる。二十二になる青年が彼女を愛してしまった。それも、二十六歳の既婚の女性を
Author: 于国頴 え·高栄生 Year 1988 Issue 12 PDF HTML
-
9. それもナンだし…
ちょうど退けどきに雨が降り出した。雨具を持ってこなかった老若男女十何人は、出るに出られずいらいらしながら事務室で雨がやむのを待っている。范迪古(フアンデイグ)はちゃんとレインコートを持ってきている。万一に備えて、用意周到でめんどうをいとわない范の、これは常備兵器だ。だが、さっき、コートを出してさっそうとここを出ようとカバンを開けにかかったその瞬間、それもちょっとナンだしな、という気がした。同僚を放
Author: 丁言 え·高栄生 Year 1989 Issue 2 PDF HTML
-
10. 禁酒(戒酒)
酒が贈られてこなくなってはじめて、彼は自分もそろそろ退職[注释1]だな、と思った。案の定、予感はすぐにも的中した。退職後、もう二度と酒を飲むまいと誓った彼は、飲みたくなると、酒瓶が並んだキャビネット[注释2]の前に黙然と立って、過ぎし日の思い出の中に身と心とを遊ばせるのだった。それでも何度か、制しきれずに酒瓶を手に取ったこともある。しかし思い直してまたそっと瓶をおろすのだった。むかしはあんなにも楽
Author: 司玉笙 え·高栄生 Year 1989 Issue 5 PDF HTML