ことしの夏は、重い夏だった。仕事がなくてぶらぶらしている日数が長びくにつれて、あてのない退屈な生活が、なんとなくあたりまえのようになっていた。もちろん、これは、あの日以前のことだ。それまでにもいろんなことがあったが、べつに自分を変えるほどではなかった。それは、人間だからしゃんとしているべきだと思う。だが、子供のとき母からあんなに沢山の「おはなし」を聞かせてもらったのに、いまだに一日じゅうだらだらし...
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ことしの夏は、重い夏だった。仕事がなくてぶらぶらしている日数が長びくにつれて、あてのない退屈な生活が、なんとなくあたりまえのようになっていた。もちろん、これは、あの日以前のことだ。それまでにもいろんなことがあったが、べつに自分を変えるほどではなかった。それは、人間だからしゃんとしているべきだと思う。だが、子供のとき母からあんなに沢山の「おはなし」を聞かせてもらったのに、いまだに一日じゅうだらだらし...