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Your search : [ author:舒升
え王書朋] Total 12 Search Results,Processed in 0.073 second(s)
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1. 石ころ
風土記に曰く「燕帰嶺ニ時ニ美玉有リ、路傍ニ隠ル」と春のやわらかい日差しを受けて寝そべっていると、枯れ草の間に芽ぐみはじめた緑の先が点点とすき通って、何千何万といちめんに星のようにひろがり、背中には土の息吹が暖かい。寝っころがってみてはじめてそれがよく分かる。これが私の休日。ほかに誰もいない、ただこの大地と私だけ。だが、いったん市内に戻れば、そんな子供じみた顔はしまいこみ、メガネの端を人差し指でちょ
Author: 舒升 え王書朋 Year 1983 Issue 11 PDF HTML
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2. 女店員
一意外!開票の結果はキャンデー売場の金鹿児(ヂンルウアル)が第一位だった。一週間の期間内で、彼女の得票が千八百九十九票に達し、二位三位をはるかにひきはなすとは、私の予想もしないことだった。どの店員が一番よいか。投票でお客に自由にえらんでもらうのも面白いのでは?これは最近うちのデパートに赴任した党委員会書記兼経理の郭さんの意見だった。「これはお客に一番発言権があることがらだし、デパートの管理にお客に
Author: 航鷹 え·王書朋 Year 1982 Issue 1 PDF HTML
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3. 年越しのパーティー(1)
メリルビレッジは、上海とは思えない静かな康徳路にあり、昔、ここはメリル保険会社の職員住宅だったが、いま住んでいる人たちの中に、メリルの関係者はもうほとんどいない。この一角には三階建てのしゃれた家が三列にならんでいる。建物と建物の間も広く取ってあり、花壇こそないが、堂々として、借地にそうぞうしくひしめいている普通の家とはまるでちがう。というのも、メリルといえば昔は大企業だったのだ。当然、いまこのビレ
Author: ●程乃珊 ●え 王書朋 Year 1986 Issue 8 PDF HTML
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4. 年越しのパーティー(2)
オートバイの止まる音をきいた沈さんの奥さんは、いそいで壁のスイッチを押して、シャンデリアをつけた。次女の瓊(けい)のボーイフレンド、唐家の御曹司を迎えるのに、八ワットの螢光スタンドではぐあいが悪い。いつも使っている壁にとりつけた螢光灯は、きょうはスイッチが壊れている。大きい電球がいくつもついているので、このシャンデリアはお正月ぐらいにしかつけないのだが。急に明るくなったのと、唐さんが階段のところで
Author: 程乃珊 え 王書朋 Year 1986 Issue 9 PDF HTML
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5. 年越しのパーティー(3)
メリルビレッジ六号館の三階に住む沈家は、主人の沈さんが東北へ単身赴任中で年に一回しか帰らないので、いつもは奥さんと娘三人、美女四人の女の園だ。今日は日曜だがドアに鍵がかかっている。長女の沁(しん)は朝早く、どこへとも告げずに出かけた。末娘の菁(せい)は工場に勤めているので日曜は休みではない。沈さんの奥さんは、次女の瓊(けい)を連れ、中二階の呉家の老夫人にもお出ましを願って、三人で南京路へ出かけた。
Author: 程乃珊 え 王書朋 Year 1986 Issue 10 PDF HTML
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6. 年越しのパーティー (4)
ひる休みの時間になった。食器を手にした菁(せい)が人の流れに入って工場食堂へ向かっでいると、誰かが名を呼んだ。くろぐろと日焼けした大柄な男が、人をかきわけてまっすぐに近づいてくる。「わァ! 帰ってきたの、簡くん!」出張の帰りが今日とは思わなかった菁は、よろこんでとび上がった。「お食事に、行きましょ」「工場の食堂でかい?
Author: ●程乃珊 ●え 王書朋 Year 1986 Issue 11 PDF HTML
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7. 年越しのパーティー(5)
上海の静かな一角、もと外資系の社宅メリルビレッジの、六号館の三階に、沈さん一家が住んでいる。もう長い間化粧に気をつかったこともない沈さんのうちの奥さんだが、きょうは何十年ぶりに同窓生の集まりに出るので、田映薇の昔にかえって、まず、つくづく鏡の中の自分を眺めてみた。色白の肌はまだみずみずしいハリを失ってはいない。パウダーなどよけいだわねと、クリームだけをうすくのばして、メークにかかった。眉はペンシル
Author: 程乃珊 え 王書朋 Year 1986 Issue 12 PDF HTML
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8. 年越しのパーティー(6)
唯平の部屋にストーブが赤く燃え、セーター姿の沁(しん)が慣れた様子で主婦のように立ち働いている。紺のタートルネックに、細い首すじの線がきわ立っている。唯平のデスクを整理し、部屋に新鮮な花を絶やさず、家の中の物のありかもすでに心得て、いまでは沁のキーホルダーに、もう一つここのが増えていた。沁は室内の電気コンロで目玉焼きをつくり始めた。共同のキッチンがあるが、そこへは顔を出したくない。「半熟がいいかし
Author: 程乃珊 え 王書朋 Year 1987 Issue 1 PDF HTML
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9. 年越しのパーティー(7)
三階の沈さんの家の奥さん映薇が、六号館の階下のキッチンで小さい石臼をまわしている。対外的には万端ぬかりないしっかり者だが、三人の娘に対しては、毎朝飲む豆乳を、豆からひいて手造りにしている子ぼんのうだ。そこへ、一階に住む張さんの奥さんが入ってきた。しわひとつない服は、ヨロイを着込んだようだ。海外、といっても香港だが、娘がむこうの人と結婚して以来、何オクターブも高い声でものを言う。「まあ、大変ですわね
Author: 程乃珊 え 王書朋 Year 1987 Issue 2 PDF HTML
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10. 年越しのパーティー(最終回)
家から提げてきた重いジャーを、落とさないように持ちかえて、ポケットのかぎをさぐると、沁(しん)は唯平の住むマンションのドアを開けた。盲腸を切ったあと、静養している唯平のために、きょうもハム入りのハトのスープを持ってきたのだ。唯平との間がきまったいまは、これまでの美女の驕慢にけじめをつけ、まめまめしく唯平の世話をしている沁である。「これをね、温めてちょうだい。とろ火で、こがさないように気をつけて」や
Author: 程乃珊 え 王書朋 Year 1987 Issue 3 PDF HTML