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え·郭偉華] Total 4 Search Results,Processed in 0.059 second(s)
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1. 細雨(上)
一柳茵(リュウイン)はもうずっと目覚まし時計を使っていない。習慣になったのだろう、毎朝目を開けると、きまって五時十分前だ。柳茵は寝返りをした。投げ出していた腕が重い。耳もとで子供の泣く声がしたようで、はっとしてこんどはほんとうに目をさました。思わず手をのばして子供が寝ていた所をさぐってみるが、赤と緑の格子柄の寝ござには誰もいない。朵朵(トウオトウオ)はもういない。あの小さないのちはたった三年で逝っ
Author: 達理 え·郭偉華 Year 1984 Issue 6 PDF HTML
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3. 細雨(中)
三空港ビルの屋上から東のサテライトへ回ると、免税品店への近道だ。自由に立入りは許されない場所だが、通行証を持っているので、柳茵は機内以外は空港のどこでも歩ける。免税品店には人影もない。正午近いので、出発便はもうないが、店員はどこにかくれてしまったのか。世界じゅう、どの大空港にもこういう店があって、それは出国する旅客に最後のコイン一枚まで使わせるのが目的だと柳茵は聞いたことがある。一点のくもりもなく
Author: 達理 Year 1984 Issue 7 PDF HTML
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4. 牡蠣を売る女
十年まえ、私が北京から大連に転勤になって、まず感じたのは大連っ子がかきに目のないことだった。かきは海蠣(ハイリーズ)子というのだが、彼らは海(ハイ)を略してじかに蠣子(リーズ)といい、それがいかにも身近な感じだ。はじめ私は栗子(リーズ)のことかと思い、いささか腑に落ちなかった。栗なんか珍しくもない、北京じゃせいぜい子供がおねだりして、二角か三角の甘栗を買ってもらって、皮をむきむき食べるくらいのもの
Author: 達理 え陳鉄軍 Year 1983 Issue 4 PDF HTML