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Your search : [ author:山本市朗] Total 12 Search Results,Processed in 0.087 second(s)
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1. 北京人情ばなし 一月
ベスト·セラー『北京三十五年』(岩波新書)で知られる山本市朗さんが語る北京の人情ばなし。「老百姓(ラオバイシン)」(普通の人々)と生活を共にされてきた山本さんならではの北京、あの表情、この表情。十二カ月、季節のうつりかわりを話題に、素顔の北京を、じっくりと語っていただきます。わたしは出不精でしてね。北京に居を定めたのが一九四四年だから、四五年の正月から数えて、そう、ちょうど四十四回めですか、正月は
Author: 山本 市朗 Year 1988 Issue 1 PDF HTML
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2. 北京人情ばなし 二月
北京に住んで四十何年になりますがね、家内が生きている時には、何といっても、結局は日本人の生活だったんですな。家内に先立たれて、はたと困ってしまった。身の回りいっさい、家内にまかせきっていたわけですから、……。工場のほうが気をきかせてくれて工場の工人(こうじん)の奥さんをお手伝いとして派遣してくれましてね、このお手伝いさんが、そっくり中国の生活をわが家に持ち込んできた。そうしますとね、これまで知らな
Author: 山本 市朗 Year 1988 Issue 2 PDF HTML
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3. 北京人情ばなし 三月
“人情噺(ばなし)”ですからね、季節には関係あるような無いような、……だけど、春先に西瓜の話でもないじぁない。やっぱり、ちょいと季節の風でも匂わせますか。そうなると、三月は忙しい。中国は、こよみは今でも旧暦なんですね。そこんとこ間違えないで、わたしのシーラカンスみたいな話聞いてくたさいよ。三月三日は、日本じぁ、お雛祭りです。白酒飲んで、女の子の節句を祝う。だけどこっちじぁ、そんなの関係ありません。
Author: 山本 市朗 Year 1988 Issue 3 PDF HTML
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4. 北京人情ばなし 四月
節気から言うと、四月四日は清明節(せいめいせつ)。お墓参りの日だ。北京じぁ、八宝山(バアパオシヤン)公墓や人民英雄記念碑にお参りして、掃除して、花を具(そな)えて帰って来る。私はね、行かないの。一昨年死んだ家内の骨を、家の中の毎日飯を喰(く)うちゃぶ台の脇に置いてあるから。それと言うのも、彼女、ちょっと変わっててね、生前から「私、日本のお葬式大嫌いだ。あれ、死んだ人の供養じぁなくて、後に残った人の
Author: 山本市朗 Year 1988 Issue 4 PDF HTML
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5. 北京人情ばなし 五月
五月ですね。好(い)い季節だ。五月の目玉行事といえば、まず一日のメーデーでしょうかね。一昨年(一九八六年)の五月一日は、国際労働節(メーデー)百周年ということで、労働人民文化宮をはじめ、市内のあちこちで色々の催し物があった。賑やかでしたよ。なんといっても、新中国は働く者の天下ですからね。実際、一九四九年の中華人民共和国成立を境にして、中国では働く者が国の主人公になったんです。五日は、日本では端午節
Author: 山本 市朗 Year 1988 Issue 5 PDF HTML
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6. 北京人情ばなし 六月
まっサラの「人民中国」雑誌社の看板の前で、故池田·菅沼の御両人が、並んで写した写真がありましたよね。雑誌社創立の頃の記念写真で、私も一枚もらってあったんだけど、どこかへ無くしちゃった。いけませんナ。その時一緒に、創刊号ももらったのを覚えてますよ。あの時からねェー、この六月でまるまる三十五年とは、驚いたなぁ。当時はね、こっちの国家機関で働いてた日本人の間には、横の学習組織があったんで、毎週一、二回の
Author: 山本 市朗 Year 1988 Issue 6 PDF HTML
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7. 北京人情ばなし 七月
七月ですね。一番暑い時だ。特に、北京の七月は暑い。それに雨期なんですよね。一年の雨が、七月に集中して降っちゃって、その雨の“しっぽ”が八月にちょっとかかるだけで、そのほかの月には殆ど雨というものがないんですよね。暑くて暑くてたまんないなと思ってると、午後ですよ、ポコッと西の空に黒い雲が出る。来たナと思ってると、それがみるみる広がって、空一面まっ黒になる。そしてもの凄い突風を先触れに、車軸を流さんば
Author: 山本市朗 Year 1988 Issue 7 PDF HTML
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8. 北京人情ばなし 八月
物価が上がりましたね。五月十五日からだから、この八月で、ちょうど三カ月ですか。八月も末になると、北京は、そろそろ秋の気配が顔をのぞかせる頃です。だけどね、秋だろうと冬だろうと、物価というやつは、庶民の日常生活に一番関係深いことでしょう。人情ばなし、と銘打ってる以上、物価を棚上げしちゃって、秋の気配をさぐる、というわけにはいきませんな。日本でも、マスコミが隣の国の物価の騰(あが)りをとりあげて、あれ
Author: 山本市朗 Year 1988 Issue 8 PDF HTML
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9. 北京人情ばなし 九月
もうひと昔前ですか、だいぶ日本株の騰(あが)った時期がありましたね。その時、北京の学生の外国語志望は、英語志望五人に日本語志望一人位の割合だと言われてました。そのあと、日本株が少し下がり気味になったんで、今は、まぁどの位の割合でしょうかね。でもね、善(よ)きにつけ悪(あ)しきにつけ長い関係があっただけに、北京の日本語の層は厚くて、そして広いんですね。ということは、同時に、その層の中に、ピンからキリ
Author: 山本市朗 Year 1988 Issue 9 PDF HTML
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10. 北京人情ばなし 十月
十月と言えば、目玉は国慶節(こつけいせつ)ですよね。今年は建国満三十九年。この頃じぁ、国慶節も、すっかり庶民の間に根を下ろして、旧正月と並んで、祝祭日の両横綱といった、そんな地位にまで伸(の)し上がりましたね。国慶節の前夜にでも、市民の家庭へ行ってごらんなさい。そりぁもう旧正月を迎える大晦日(おおみそか)にも引けをとらないような馳走(ちそう)を盛大に並べたてて、家中で賑(にぎ)やかに団欒(だんらん
Author: 山本市朗 Year 1988 Issue 10 PDF HTML