夕月や槐(エンジュ)にまじる合歓(ネム)の花灰捨つる路は槐の莢(さや)ばかり石垣に日照りいざよふ夕べかな来て見れば軒はふ薔薇に青嵐右の数首は一九二一年夏の北京の景観を詠んだ俳句だが、いずれも小説家芥川龍之介の手になるものである。中には、彼が北京から友人に送った手紙に書かれたものもあるし、後日発表したものや生前未発表のものもある。『羅生門』や『杜子春』などの人口に膾炙する名作を残した芥川龍之介は、実...
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夕月や槐(エンジュ)にまじる合歓(ネム)の花灰捨つる路は槐の莢(さや)ばかり石垣に日照りいざよふ夕べかな来て見れば軒はふ薔薇に青嵐右の数首は一九二一年夏の北京の景観を詠んだ俳句だが、いずれも小説家芥川龍之介の手になるものである。中には、彼が北京から友人に送った手紙に書かれたものもあるし、後日発表したものや生前未発表のものもある。『羅生門』や『杜子春』などの人口に膾炙する名作を残した芥川龍之介は、実...