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『物権法』が立退き紛争を変えた

Year:2007 Issue:12

Column: 知っておくと便利 法律あれこれ(36)

Author: 弁護士 鮑栄振

Release Date:2007-12-05

Page: 62,63

Full Text:  

本誌の昨年六月号で、中国では不動産バブルの発生を防止するため、金融·土地·租税政策などの調整が続々と打ち出されるであろうから、不動産価格は下落へ転じうる、と書いたが、この予測は見事に外れた。ここ数年、不動産価格の高騰抑制措置や金利の引上げ措置が次々と講じられているものの、不動産価格は大幅な下落どころか、高騰の一途をたどっている。

中国の不動産業の好景気が続く中、土地や建物の収用がひんぱんに行われるようになった。これに伴い、開発業者と権利者との紛争も多発している。立退きはもっともホットな話題の一つとなっているが、そのうち全国的に注目を浴びた事件が二つある。

一つは「史上最牛的釘子戸」(史上もっとも頑固な立退き拒否者)といわれた事件である。

三年前、重慶市九竜坡区で二百十九平方メートルの二階建ての飲食店が商業ビル建設用地に指定された。しかし経営者の楊夫妻は、立退き補償金が市価とあまりに隔たっているとして、開発業者と対立した。

同地区の他の住民二百八十戸はすべて立ち退いたが、楊夫妻だけは立ち退かなかった。工期を急いだ開発業者は、水道と電気を停め、楊さんの店の周囲は九メートルほどの深さに掘り下げられた。楊さんの飲食店はまさに陸の孤島になった。

開発業者側は人民法院に飲食店撤去の強制執行を申し立て、許可を受けた。しかし、楊夫妻は、断固として立退きを拒否し、三年にわたって居座り続けた。結局、今年四月、中国全土が注目する中、楊夫妻は補償金約四百万元(約六千百万円)で開発業者と和解した。

この解決は、『物権法』の成立によるところが大きいと考えられる。これまでは、一部の地方では、立退きに際して国家の利益、公共の利益、集団の利益が何よりも優先すべきとされ、個人財産の保護への配慮が足りなかった。今年三月、『物権法』が制定され、国家、集団、個人の財産は平等に保護するものとされた。この私有財産保護の法的保証は、画期的な変革である。


鮑栄振(ほうえいしん)北京市の金杜律師事務所の弁護士。1986年、日本の佐々木静子法律事務所で弁護士実務を研修、87年、東京大学大学院で外国人特別研究生として会社法などを研究。

鮑栄振(ほうえいしん)北京市の金杜律師事務所の弁護士。1986年、日本の佐々木静子法律事務所で弁護士実務を研修、87年、東京大学大学院で外国人特別研究生として会社法などを研究。

『物権法』は、権利者の権益保護を強化するために、公共の利益を目的とする場合を除き、集団所有の土地、企業·個人の建物や不動産を収用してはならない、と収用の目的を限定し、また、公共の利益のために収用を行う場合であっても、法により補償しなければならない、としている(四二条)。

もう一つの事件は、深圳版の立退き拒否事件である。立退きを拒否した張さんは、一年以上にわたり協議を続けた結果、今年九月末、一千万元以上の補償金を受け取ることで、和解が成立した。

重慶の事件と異なる点は、現地の人民法院が強制執行をせずに調停し、それが功を奏したことだ。これは明らかに、人民法院が『物権法』の趣旨を踏まえ、個人財産を平等に保護したことによるものであろう。またこれは中国が、法治国家に向かって大きく前進していることを示している。

立退きは、合意による立退きと収用による立退きの二つに大別される。法律的には、この二つの立退き拒否事件は、平等な当事者間の合意による立退きに該当することは明らかだ。こうした立退きは、契約自由の原則に基づいて、当事者間で契約を締結すべきである。

にもかかわらず現行の『都市家屋立退き管理条例』は、開発業者が契約を締結することなく政府主管機関から立退き許可を取得することができ、また、住民がそれに応じなければ、人民法院に強制執行を申し立てることも可能とされている。このため公権力の不当な介入こそ、立退き紛争の主な要因の一つと指摘されている。

このため中国建設部(建設省)は現在、『物権法』の趣旨に基づいて『都市家屋立退き管理条例』の改正を検討し始めたという。

この改正作業は、公共の利益の意義を明確化し、合意による立退きにおける政府機関の立場を公平·中立にし、収用手続を規範化することによって、公共の利益のための土地収用に際し、立退く人の十分な利益保護を実現するものとして期待されている。


訂正 十月号の本欄で、「固定期間労働契約」について「期間の定めのない労働契約」と記しましたが、「期間の定めのある労働契約」の誤りでした。訂正します。

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