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年越しの爆竹禁止から制限へ

Year:2007 Issue:12

Column: 13億の生活革命―(59)

Author: 侯若虹=文 馮進=写真

Release Date:2007-12-05

Page: 46-49

Full Text:  

薄れた伝統的習慣

まもなく年末。新しい年がまたやって来る。

しかし中国人にとっては、旧暦の新年である春節こそが盛大に祝うべき祝日。普通の社会生活では新暦を使って生活しているが、この時期になると、知らず知らずのうちに旧暦で日付を数えている。

伝統的な習慣によれば、「臘月」(旧暦の十二月)に入ったら年越しの準備をする。北方の民謡に年越しの準備を歌ったものがある。「(旧暦)二十三日は『糖瓜』(かまどの神に供える麦芽糖で作ったウリ型のあめ)を供える、二十四日は部屋掃除、二十五日は凍り豆腐づくり、二十六日は豚肉を煮込む、二十七日は肥えた鶏を絞める、二十八日は小麦粉を発酵させる、二十九日は饅頭(マントウ)を蒸す、三十日はオンドルの上でギョーザを包む」。このような慌しくも楽しい序曲が終わると、年越しのクライマックスである除夜のご馳走と花火·爆竹の登場だ。


毎年春節の前になると、商店には各種各様の花火や爆竹が並ぶ

毎年春節の前になると、商店には各種各様の花火や爆竹が並ぶ


花火を上げ爆竹を鳴らすのは年越しのなかでもっとも喜ばしい行事のひとつだ。特に子どもにとっては一番楽しい時間

花火を上げ爆竹を鳴らすのは年越しのなかでもっとも喜ばしい行事のひとつだ。特に子どもにとっては一番楽しい時間

除夜に爆竹を鳴らす習慣は、ある古い伝説に基づく。それによると、昔、「年」という鬼がいて、毎年旧暦の大晦日になると村へやって来て人を食った。人々はこれを非常に恐れていたが、「年」は赤色と爆発音を怖がったため、門に赤紙の「春聯」(めでたい文句を書いた対聯)を貼り、爆竹を鳴らして鬼を追い払った。ここから、「春聯」と爆竹は迎春を祝う大切な伝統的習慣になったと伝えられている。

しかし近年、中国人の年越しの伝統的習慣は大きく変わった。今でも、赤い装飾品で部屋や周囲を飾ることは好むが、自分で「春聯」や「窓花」(窓飾りに用いる切り紙細工)を作る人はあまりいない。既製の年越しの飾りは、種類は多いが個性や親しみやすさに欠ける。若者の中には「糖瓜」を見たことがない人もいる。また、かつては年越しの食べ物を自宅で作っていたが、最近はスーパーで売っているできあいのものを買う人も多い。

一方、花火や爆竹の種類は豊富になった。打ち上げ花火の質もかつてとは比べものにならないほどよくなった。

一九八〇年代以降、生活レベルが向上し社会が開放されるのにともない、中国人は除夜に爆竹を鳴らすことに情熱を傾けるようになった。毎年大晦日の夜になると、都市も農村も爆竹の音の中に埋もれる。煙がもうもうと立ち上り、ほんのりと明るい火の光の中に人々の笑顔が映し出される。みんなが、喜びのムードに感化された。

喜びのあまり……

しかし、花火や爆竹の使用が激しくなるにつれ、大気汚染や火災の危険、傷害事故、騒音被害など多くの弊害ももたらされた。


①都市周辺にある花火·爆竹市場

①都市周辺にある花火·爆竹市場

これには、時代の進化と生活の変化が大きく関係している。人口が少なく、人々が分散して住んでいた時代、年越しの爆竹の音は単調な生活をにぎやかで喜ばしいものに変えた。だが、人口が急激に増え、高層ビルがびっしりと建ち並ぶ都市においては、爆竹がもたらすのは喜びのムードだけではなくなった。

都市に住む多くの人は、除夜に爆竹が鳴り出したとたん、窓を閉め、煙の刺激や汚染を少しでも減らそうとするようになった。また、頻繁に発生する火事や傷害事故は、年越しのおめでたいムードを台無しにした。このため、都市では花火や爆竹の使用を禁止するよう提案する人が現れた。

一九九三年に北京市が市街区と近郊区の市民八万人を対象に行ったアンケートによると、八四·六%が花火や爆竹の使用禁止に「賛成」、十三·二%が「反対」、二·二%が「どちらでもいい」だった。当時、上海や広州、深圳などはすでに使用を禁止していた。そこで北京も、人口が密集する市街区では花火や爆竹を使用してはいけないという規定を出し、五環路の外のみで使用を許可した。


街中に設置された花火や爆竹の使用禁止を示す表示板

街中に設置された花火や爆竹の使用禁止を示す表示板

禁止から二年目の九四年の除夜、禁止された地区では花火や爆竹の音が上がることは一切なく、病院にもケガをしたといって運ばれてくる患者は一人もいなかった。すべてが希望したように順調であるかのように見えた。

年越しのムードは何処へ

だが、このような静けさはそう長くは続かなかった。

北京に住む張東華さん(四十八歳)。花火や爆竹の使用禁止には賛成している。「新聞で花火や爆竹でケガをして、ひどいときには眼球を失ったというニュースを読んで、このような状態は絶対に変えるべきだと思っていた」と話す。しかしその一方、どこか寂しさも感じている。「私が子どもの頃は、爆竹の音の中で古い年が過ぎ去っていくのを知ったものです。春節に爆竹が鳴るのを聞いてはじめて、自分も一つ大きくなったのだと感じた。今は、大晦日のテレビ番組が面白くないため、私たち一家はギョーザを包みながらチャンネルをいろいろと回す。それでも満足できる番組がないので、隣近所の人たちと郊外へ行って爆竹を鳴らします。こうすれば、爆竹の音も聞こえるし、人をケガさせる心配もありませんから」


②不法に製造·販売された質の悪い花火や爆竹を処分する政府の担当者

②不法に製造·販売された質の悪い花火や爆竹を処分する政府の担当者


③郊外へ行って花火を上げ爆竹を鳴らす都市の人々

③郊外へ行って花火を上げ爆竹を鳴らす都市の人々

張さんと同じように考えている人は少なくない。禁止後数年は、爆竹の音はまばらだったが、最近は増えてきている。爆竹を鳴らしに行かなかったとしても、年越しのときに爆竹の音がないのは寂しいと考える人は多い。静かな除夜というのはなんだか落ち着かず、年越しの趣がないのだという。特に年長者はこのように感じる人が多いようだ。

五環路の外では爆竹を鳴らしてもいいことになっているが、多くの人はこれに満足していない。除夜に花火を上げ爆竹を鳴らすのは、単なる遊びではなく、特別な民俗的意味が含まれているからである。大晦日の深夜零時、俗に「一夜が二つの年につながり、五更(ごこう)(一夜)が二年に分かれる」といわれる時間に自宅の周辺で爆竹を鳴らしてこそ、福を迎えるという喜びの意味があるのだ。

市街区では花火や爆竹の使用は禁止されているが、それを取り締まるのは難しい。ある取り締まり員は、これはいたちごっこのようなものだと話す。花火や爆竹の音を聞いて現場に駆けつけると、音だけで人影は見えない。たとえ人がいたとしても、誰が鳴らしたのかは確かめようがない。「証拠をつかむのが難しいだけでなく、もし嫌疑者を見つけたとしても、ただ説教するしかない。年越しは誰もが喜び楽しみたいものです。もし逮捕したら、その人とその家族の一年は気分が悪いものになってしまいますから」

近年、社会環境の変化と爆竹の使用禁止により、人々はかつてほど伝統的な春節を重視しなくなった。春節の長期休暇を利用して旅行に出かける人も多い。家にいても年越しのムードがないため、遊びに行くほうがいいと考えるからだ。伝統文化の喪失を嘆く人も増えた。彼らは、快く響く爆竹の音の中に年越しのムードを見つけ出し、かすかに漂う火薬の香りの中に祝いのムードを嗅ぎ取りたいと願っている。

多くの都市で一部解禁

ここ数年、爆竹の使用が禁止されている都市でも、除夜に爆竹を鳴らす人が増えた。春節に花火を上げ爆竹を鳴らしたいという声もますます高まっている。そこで、一部の都市は部分的に禁止令を取り消した。二〇〇三年までに、花火や爆竹の使用を禁止している全国二百八十二の都市のうち、上海や杭州など百五都市が一部解禁した。

北京市も禁止から十二年後の〇五年、市民や専門家の意見を広く聴いたあと、花火や爆竹の使用を「禁止」から「制限」へと切り替えた。これにより、五環路内は使用制限地区となり、旧暦の大晦日と元日は終日、一月二日から十五日は七時から二十四時まで、花火を上げ爆竹を鳴らしてもよいことになった。

新しい規定は花火や爆竹の使用を全面的に解禁したわけではない。自分勝手な使用は許さず、文物保護単位や駅、空港などの交通の要所、送·変電所、医療機関、幼稚園、老人ホーム、山林など多くの場所が使用禁止区に指定されている。

新しい規定が出されてからも、さまざまな意見が提出されている。一部の団地では、住民たちが自発的に団地内では花火や爆竹の使用を禁止し、団地の外でのみ使用してもよいという規定を定めた。人々の生活は昔とは異なり、団地内の衛生や高齢者や子どもの休息、駐車してある自家用車の安全などに配慮するようになったからだ。禁止から制限に切り替わったことにより、人々の選択肢は広がったといえよう。


参考データ

▽爆竹の起源は2000年以上前に遡る。始めは魔除けに用いられていたが、今では、伝統的な祝日や婚礼などの喜び事、各種の祝典、縁日などではほとんど爆竹が鳴らされる。特に春節期間は、一年の使用量の半分以上を消費する。

▽『北京日報』の報道によると、2007年の春節期間(旧暦大晦日から1月7日まで)、北京市で集められた花火や爆竹の残り屑は2600トン以上にのぼった。

▽広州市は1992年3月、花火や爆竹の使用を法的に禁止。その後、北京、上海、南京なども相次いで禁止した。

▽ここ2、3年、一部の都市は市民の声に耳を傾け、花火や爆竹の使用を禁止から制限に切り替えている。北京や重慶などは06年から制限に切り替えた。07年現在、鄭州、洛陽、武漢、南寧、柳州、桂林、福州など多くの都市が一部解禁に踏み切っている。

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