ペンハの丘から眺めるマカオの港は、今日も鏡のように静かだ。少年時代、学舎の窓からグラバー邸の屋根ごしに眺めて暮らした長崎の港に、いつ見てもよく似ている。向こう岸にそびえる珠海の対面山(といめんさん)も、父母の眠る稲佐山にそっくりなのだ。ただ水面が長崎よりもやや狭く、港をよぎって行き交う草履(そうり)のような“電鉄”船の姿がないのは、ちょっと淋しいかな、という感じもする。この丘へ来るたびに私は、茫然...
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ペンハの丘から眺めるマカオの港は、今日も鏡のように静かだ。少年時代、学舎の窓からグラバー邸の屋根ごしに眺めて暮らした長崎の港に、いつ見てもよく似ている。向こう岸にそびえる珠海の対面山(といめんさん)も、父母の眠る稲佐山にそっくりなのだ。ただ水面が長崎よりもやや狭く、港をよぎって行き交う草履(そうり)のような“電鉄”船の姿がないのは、ちょっと淋しいかな、という感じもする。この丘へ来るたびに私は、茫然...