十年も前のことになる。一九八五年の一月一日、わたしは北京郊外の万里の長城の上に立って初日の出を迎えた。天気予報では北京の気温は零下十度と伝えられていたが、市内から北へ五〇キロ、山の上にある万里の長城で肌に感じる寒さはもっと厳しいものだった。日の出は七時三十六分と聞いていた。七時をちょっと回ったころに万里の長城に着く。東の空が眺められる一角に陣取り、凍える手でウイスキーを傾けながら日の出を待つ。七時...
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十年も前のことになる。一九八五年の一月一日、わたしは北京郊外の万里の長城の上に立って初日の出を迎えた。天気予報では北京の気温は零下十度と伝えられていたが、市内から北へ五〇キロ、山の上にある万里の長城で肌に感じる寒さはもっと厳しいものだった。日の出は七時三十六分と聞いていた。七時をちょっと回ったころに万里の長城に着く。東の空が眺められる一角に陣取り、凍える手でウイスキーを傾けながら日の出を待つ。七時...