猪鼻百合さんの半生

中国の農村で四十年間苦しい生活を送ってきた日本人孤児、猪鼻百合さんは、一九八七年九月に青森県八戸市に帰って家族と再会を果たした。だが五カ月後の八八年二月、彼女はまた中国の家に帰ってきた。離散していた肉親と半世紀ぶりにめぐりあったというのに、なぜ中国に帰ってきたのか？　外国のきらびやかな生活に誘惑されて、故国に帰ろうともしない中国人もいるのに、なぜ百合さんは享楽よりも中国での苦しい生活を選んだのか？...