尚義が人事庁の庁長を退いてからというもの来訪者は次第にまれになった。向かいのドア[注释1]の、新しく起用された林庁長のところは、それにひきかえ、門前、市をなしている。「これからは、私は静かな日々を送るのだ」尚はいつもこう思っている。尚と老妻は、ベランダに沢山の花を植え、かわいいマミジロを何羽か飼っている。これが鳴くと、深山の原始林にでもいるようで、二人はうっとりしてしまう。だが、ここは原始林ではな...
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尚義が人事庁の庁長を退いてからというもの来訪者は次第にまれになった。向かいのドア[注释1]の、新しく起用された林庁長のところは、それにひきかえ、門前、市をなしている。「これからは、私は静かな日々を送るのだ」尚はいつもこう思っている。尚と老妻は、ベランダに沢山の花を植え、かわいいマミジロを何羽か飼っている。これが鳴くと、深山の原始林にでもいるようで、二人はうっとりしてしまう。だが、ここは原始林ではな...