開元十五年の春、李白二十七歳。洞庭湖畔で友人呉指南の遺骨を移葬し終わった李白は、そのまま安州への街道をたどった。安州の州府は、いまの湖北省安陸である。まだ故郷にいた幼年時代、李白は父に命じられて、漢代の文学者司馬相如の『子虚賦』を読んだことがあるが、文中に描かれた雲夢沢の壮観に魅せられ、将来かならず行ってみようと決めていた。古代、雲夢沢は湖北と湖南両省にまたがる大沢で、その中心が安陸のあたりだった...
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開元十五年の春、李白二十七歳。洞庭湖畔で友人呉指南の遺骨を移葬し終わった李白は、そのまま安州への街道をたどった。安州の州府は、いまの湖北省安陸である。まだ故郷にいた幼年時代、李白は父に命じられて、漢代の文学者司馬相如の『子虚賦』を読んだことがあるが、文中に描かれた雲夢沢の壮観に魅せられ、将来かならず行ってみようと決めていた。古代、雲夢沢は湖北と湖南両省にまたがる大沢で、その中心が安陸のあたりだった...