えんじゅの木の下で

えんじゅの木のある古い町の一角に、一年坊主がいて、そこへ四年の女の子が越してきた。あれからもう二十年。ただいま、玉珊ねえさん。また来てしまいましたよ。大きくなったな、この木も。両側の軒にかぶさって、庭じゅうが緑のかげになっている。蟬しぐれが涼しい。湿った樹皮の割れ目に、かたつむりがじっとしている。おぼえていますか？おでこで押しくらして遊んでくれたことがありましたね。うちのうしろの奥庭に、瓦ぶきの一...