蘇州の刺繡と伝説古典小説『水滸伝』を読んだことのある方は、両の腕や肩、胸に九匹の竜の入れ墨をして「九紋竜」のあだ名で呼ばれた梁山泊の勇者、史進のことを覚えておられるだろう。刺しゅうの里蘇州での取材中に知ったことだが、驚いたことにこの入れ墨という古い習俗が、つまり刺しゅう工芸の発端なのだという。―大昔のことである。江南の水郷は、地勢が低いのでつねに水害に見まわれた。そのつど、水中にひそんでいた蛟竜が...
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蘇州の刺繡と伝説古典小説『水滸伝』を読んだことのある方は、両の腕や肩、胸に九匹の竜の入れ墨をして「九紋竜」のあだ名で呼ばれた梁山泊の勇者、史進のことを覚えておられるだろう。刺しゅうの里蘇州での取材中に知ったことだが、驚いたことにこの入れ墨という古い習俗が、つまり刺しゅう工芸の発端なのだという。―大昔のことである。江南の水郷は、地勢が低いのでつねに水害に見まわれた。そのつど、水中にひそんでいた蛟竜が...