しとしとと降りつづく秋雨は一向にやみそうにもない。『儒林外史』を執筆中の清代の傑出した文学者呉敬梓(一七〇一~一七五四)はもう二日も食事をとっていなかった。おなかはすくし、目まいはする、耐えられなくなってとこに横になりあえいでいた。わらぶきのあばら屋はいたるところ雨もりがし、ゆかはもうびっしょりと濡れていた。「おい、筆をかえしておくれ、わしの著作はまだ書きおえていないんだ」呉敬梓は妻に言った。「あ...
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しとしとと降りつづく秋雨は一向にやみそうにもない。『儒林外史』を執筆中の清代の傑出した文学者呉敬梓(一七〇一~一七五四)はもう二日も食事をとっていなかった。おなかはすくし、目まいはする、耐えられなくなってとこに横になりあえいでいた。わらぶきのあばら屋はいたるところ雨もりがし、ゆかはもうびっしょりと濡れていた。「おい、筆をかえしておくれ、わしの著作はまだ書きおえていないんだ」呉敬梓は妻に言った。「あ...