唐代の成都に、薛濤、字を洪度という有名な女流詩人がいた。さわやかな秋、文人たちは成都郊外の浣花渓のほとりの酒館で、薛濤に、扇面に詩を書いてほしいと頼んだ。薛濤は快く一首また一首、絶妙の詩を書き与え、そのたびに人びとはどよめいた。たまたま来合わせた西川節度使の高駢がそれを耳にし、「たかが酒館の歌姫にどれほどの学があるか。だが、こんなに人がさわぐからには、ひとつ行って試してやろう」と思った。そこで人だ...
Please login first!
唐代の成都に、薛濤、字を洪度という有名な女流詩人がいた。さわやかな秋、文人たちは成都郊外の浣花渓のほとりの酒館で、薛濤に、扇面に詩を書いてほしいと頼んだ。薛濤は快く一首また一首、絶妙の詩を書き与え、そのたびに人びとはどよめいた。たまたま来合わせた西川節度使の高駢がそれを耳にし、「たかが酒館の歌姫にどれほどの学があるか。だが、こんなに人がさわぐからには、ひとつ行って試してやろう」と思った。そこで人だ...