今でこそ蟹(かに)に舌つづみを打つ人は多いが、最初にこれを食った人は、たいへん勇気のあった人物にちがいない。この世でただ一人横に這い、全身を甲(よろい)と戈(ほこ)で完全武装したこの動物は、当代きっての国画家、すでに物故された斉白石翁の解放前の作品にも顔を出すが、翁はその一幅に、皮肉たっぷりに、「はてさて、いつまで横行っているのやら」といった意味の題字をつけている。それはともかく、鉄とも石とも見え...
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今でこそ蟹(かに)に舌つづみを打つ人は多いが、最初にこれを食った人は、たいへん勇気のあった人物にちがいない。この世でただ一人横に這い、全身を甲(よろい)と戈(ほこ)で完全武装したこの動物は、当代きっての国画家、すでに物故された斉白石翁の解放前の作品にも顔を出すが、翁はその一幅に、皮肉たっぷりに、「はてさて、いつまで横行っているのやら」といった意味の題字をつけている。それはともかく、鉄とも石とも見え...