牧畜民の引っ越し列車は疾風のように走っている。蒸気機関車が吐きだした白い煙が、風に吹き散らされて、たなびく雲のように車窓をかすめてゆく。その、遠のいてゆく「白雲」を、私は車窓ごしに目で追った。すると、あまり遠くないところに、野原をゆったりと歩いている一群の人馬があるのに気が付いた。先頭の、馬にまたがった男は、羊の群れを追っており、その後ろに三台の牛車がつづく。車輪は大きく、直径が約一メトルはあり、...
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牧畜民の引っ越し列車は疾風のように走っている。蒸気機関車が吐きだした白い煙が、風に吹き散らされて、たなびく雲のように車窓をかすめてゆく。その、遠のいてゆく「白雲」を、私は車窓ごしに目で追った。すると、あまり遠くないところに、野原をゆったりと歩いている一群の人馬があるのに気が付いた。先頭の、馬にまたがった男は、羊の群れを追っており、その後ろに三台の牛車がつづく。車輪は大きく、直径が約一メトルはあり、...