むかし、ある所に、なにごとも古い経典に当たり、その教えどおりにやらねば気のすまぬ“本の虫”がいた。ある日、くつを買いかえることになった。もう十寸の大足になったというのに、この男、そんなことは知らぬとばかりに、父親の書き残しておいた竹簡をとりだしてきた。その竹簡には、「わが子は七歳、六寸のくつをはく……」と、かれの幼時のくつの寸法が記されていた。これだ、これだといって、男は六寸のくつを買い入れた。け...
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むかし、ある所に、なにごとも古い経典に当たり、その教えどおりにやらねば気のすまぬ“本の虫”がいた。ある日、くつを買いかえることになった。もう十寸の大足になったというのに、この男、そんなことは知らぬとばかりに、父親の書き残しておいた竹簡をとりだしてきた。その竹簡には、「わが子は七歳、六寸のくつをはく……」と、かれの幼時のくつの寸法が記されていた。これだ、これだといって、男は六寸のくつを買い入れた。け...