今月は明代の画家沈周の「辛夷図」をえらんだ。淡墨に彩色した二本の辛夷の、筆先のようなつぼみ、綻びた花びらが、ていねいに描かれて真に迫る。力強い枝、つややかな葉。紫、緑、黄の配色が上品で明るく、早春の息吹があふれている。没骨法による水墨と淡彩は、暈と染とが結合し、筆力は充実して落付きがあり、形象は写実的で、気品がただよう。沈周の花卉画は、宋、元いらいの水墨画の写意の伝統をうけついだもので、次の陳淳、...
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今月は明代の画家沈周の「辛夷図」をえらんだ。淡墨に彩色した二本の辛夷の、筆先のようなつぼみ、綻びた花びらが、ていねいに描かれて真に迫る。力強い枝、つややかな葉。紫、緑、黄の配色が上品で明るく、早春の息吹があふれている。没骨法による水墨と淡彩は、暈と染とが結合し、筆力は充実して落付きがあり、形象は写実的で、気品がただよう。沈周の花卉画は、宋、元いらいの水墨画の写意の伝統をうけついだもので、次の陳淳、...