あゝ、もう五時か。時計の音に、呂副部長(次官クラス)夫妻は顔を見合わせた。二人とも口には出さないが、いらいらして落ち着かない。広い瀟洒な書斎の皮張りの椅子にいる呂伯蓀は、もう長い眉が白く、やせてしわの深い頰には老人性の褐色のしみが、いくつも浮いているが、鋭い目と、かたく結んだ口もとに、往年の威厳をうかがわせる。文化大革命のとき、「裏切り者」ということで三年、「労働改造」ということで九年、苦しい目に...
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あゝ、もう五時か。時計の音に、呂副部長(次官クラス)夫妻は顔を見合わせた。二人とも口には出さないが、いらいらして落ち着かない。広い瀟洒な書斎の皮張りの椅子にいる呂伯蓀は、もう長い眉が白く、やせてしわの深い頰には老人性の褐色のしみが、いくつも浮いているが、鋭い目と、かたく結んだ口もとに、往年の威厳をうかがわせる。文化大革命のとき、「裏切り者」ということで三年、「労働改造」ということで九年、苦しい目に...