ゴビの砂漠で討論する去年の秋のことだ。私は文学界の友人数名と打ちつれて西北の旅に出かけた。一日、時間はもう昼ちかい。汗ばむ陽気のなかを車は敦煌西方をすでに三時間余りもつっぱしっていたが、宿駅や村落らしいものが見つからない。用意してきた水はとっくになくなっていた。「このさきの方でどこかひと息入れられるところはないかね?」と誰かが案内人にきいた。「あの砂山のところまでゆくと湖があります。湖があるところ...
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ゴビの砂漠で討論する去年の秋のことだ。私は文学界の友人数名と打ちつれて西北の旅に出かけた。一日、時間はもう昼ちかい。汗ばむ陽気のなかを車は敦煌西方をすでに三時間余りもつっぱしっていたが、宿駅や村落らしいものが見つからない。用意してきた水はとっくになくなっていた。「このさきの方でどこかひと息入れられるところはないかね?」と誰かが案内人にきいた。「あの砂山のところまでゆくと湖があります。湖があるところ...