ナツメ林を通りぬけ、久しぶりでふるさとの土をふんだ。ナツメが熟れるころで、六、七キロもつづくナツメ林のたたずまいは、ちょうど花嫁衣裳をまとった娘がはにかみながら迎えの人の到来を待っているかのようであった。曲折し、交錯した小枝は葉を落しはじめ、実をずっしりとつけている。あかくなった実はメノウを、まだ青い実はヒスイを思わせ、半ば色づいた実はウルシをぬったかのようだ。夕日がナツメ林にてりはえ、鮮やかな色...
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ナツメ林を通りぬけ、久しぶりでふるさとの土をふんだ。ナツメが熟れるころで、六、七キロもつづくナツメ林のたたずまいは、ちょうど花嫁衣裳をまとった娘がはにかみながら迎えの人の到来を待っているかのようであった。曲折し、交錯した小枝は葉を落しはじめ、実をずっしりとつけている。あかくなった実はメノウを、まだ青い実はヒスイを思わせ、半ば色づいた実はウルシをぬったかのようだ。夕日がナツメ林にてりはえ、鮮やかな色...