「母ちゃん!父ちゃんはまーだかえってこないなあ」よくとおる声とともに、ぴちぴちした男の子が、家のなかにとびこんできた。ことしちょうど十歳、虎みたいに不敵なつらがまえ、それに目が虎のように大きいので、生産隊の副隊長をしている父ちゃんが「虎ぼう」と名づけたのである。あかりのもとで布靴の底をつくっていた母ちゃんは、虎ぼうをちらとみて、「どこへいってただ」「村の入口で父ちゃんがかえってくるのを待ってたんだ...
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「母ちゃん!父ちゃんはまーだかえってこないなあ」よくとおる声とともに、ぴちぴちした男の子が、家のなかにとびこんできた。ことしちょうど十歳、虎みたいに不敵なつらがまえ、それに目が虎のように大きいので、生産隊の副隊長をしている父ちゃんが「虎ぼう」と名づけたのである。あかりのもとで布靴の底をつくっていた母ちゃんは、虎ぼうをちらとみて、「どこへいってただ」「村の入口で父ちゃんがかえってくるのを待ってたんだ...