一寒風が骨をさす冬のさなかだというのに、小さな船着場は、人の往来も貨物の輸送もひんぱんをきわめて、実に活気にみちている。一隻の小さな客船が岸を離れようとしていた。そのとき、岸に沿った道を船着場へと女の兵士が一目散に走ってきた。岸辺までくると、かの女はためらいながら、ともづなをといている年輩の船頭にたずねた。「同志、その船は町へいくのでしょう」「そのとおり、すぐにでるから、早く乗りなさい」船頭は顔も...
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一寒風が骨をさす冬のさなかだというのに、小さな船着場は、人の往来も貨物の輸送もひんぱんをきわめて、実に活気にみちている。一隻の小さな客船が岸を離れようとしていた。そのとき、岸に沿った道を船着場へと女の兵士が一目散に走ってきた。岸辺までくると、かの女はためらいながら、ともづなをといている年輩の船頭にたずねた。「同志、その船は町へいくのでしょう」「そのとおり、すぐにでるから、早く乗りなさい」船頭は顔も...