「同志! どちらへ?」だしぬけに背後で大きな声がした。所用で紅石崖へゆくとちゅうである。わたしは夜明けに出発した。ゆうべははじめての春雨でよろこんでいたら、いつのまにか小雪になった。それが夜風にふかれて路面には薄氷がはっているので、とてもすべりやすいのだ。小心翼々、ペダルをふんでいるところへもってきて、突然声をかけられたもので、ふりむいた拍子にハンドルの手をあやまり、あぶなく倒れそうになった。声の...
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「同志! どちらへ?」だしぬけに背後で大きな声がした。所用で紅石崖へゆくとちゅうである。わたしは夜明けに出発した。ゆうべははじめての春雨でよろこんでいたら、いつのまにか小雪になった。それが夜風にふかれて路面には薄氷がはっているので、とてもすべりやすいのだ。小心翼々、ペダルをふんでいるところへもってきて、突然声をかけられたもので、ふりむいた拍子にハンドルの手をあやまり、あぶなく倒れそうになった。声の...