へさきに近い船室に座席を見つけ、手荷物を置き、気持が落ちつくと、はじめて、自分の向かいがわの席に、五十をこえたおばあさんがいるのに気づいた。白髪がめだち、しわがふかくきざまれているが、やさしいまなざしでわたしを見つめている。「おばあさん、どちらへお出かけですか」とわたしはたずねた。「陳婆州まで」とおばあさんはほほえんだ。おばあさんのことばには洞庭湖一帯のなまりがあった。そこで、わたしは言葉をついだ...
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へさきに近い船室に座席を見つけ、手荷物を置き、気持が落ちつくと、はじめて、自分の向かいがわの席に、五十をこえたおばあさんがいるのに気づいた。白髪がめだち、しわがふかくきざまれているが、やさしいまなざしでわたしを見つめている。「おばあさん、どちらへお出かけですか」とわたしはたずねた。「陳婆州まで」とおばあさんはほほえんだ。おばあさんのことばには洞庭湖一帯のなまりがあった。そこで、わたしは言葉をついだ...