空は澄みわたっていた。環水にいる高鷹(カオイン)に新しい針療法をならいにゆこうと、わたしは漁船に乗った。船頭の老人は六十の坂を越していた。赤銅色の顔にふかくシワがきざみこまれている。ズボンのすそをまくりあげ、長い竿をあやつりながら急な流れをさかのぼるのだが、平地を歩くように軽やかだ。船には漢方薬の益母草(せくもそう)が一束つんであった。好奇心にかられて老人に目をやると、老人もわたしがもっている赤十...
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空は澄みわたっていた。環水にいる高鷹(カオイン)に新しい針療法をならいにゆこうと、わたしは漁船に乗った。船頭の老人は六十の坂を越していた。赤銅色の顔にふかくシワがきざみこまれている。ズボンのすそをまくりあげ、長い竿をあやつりながら急な流れをさかのぼるのだが、平地を歩くように軽やかだ。船には漢方薬の益母草(せくもそう)が一束つんであった。好奇心にかられて老人に目をやると、老人もわたしがもっている赤十...