わたしはいま一九六四年三月の日記をひらいている。わたしの第三回目の中国訪問のときだ。日本作家代表団のひとりとして、由起しげ子、武田泰淳、大岡昇平、白土吾夫の諸君とともにおよそ二週間の旅をつづけたが、三月一五日の日付を見ると、その日の午前一一時ごろ、わたしは中国作家協会の林元、李英儒の両先生の案内で、北京の外城にある天壇の石だたみの上を歩いている。春の淡い光を浴びながら、楽しい半日をすごしたと記して...
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わたしはいま一九六四年三月の日記をひらいている。わたしの第三回目の中国訪問のときだ。日本作家代表団のひとりとして、由起しげ子、武田泰淳、大岡昇平、白土吾夫の諸君とともにおよそ二週間の旅をつづけたが、三月一五日の日付を見ると、その日の午前一一時ごろ、わたしは中国作家協会の林元、李英儒の両先生の案内で、北京の外城にある天壇の石だたみの上を歩いている。春の淡い光を浴びながら、楽しい半日をすごしたと記して...