田辺尚雄先生のお宅におうかがいしたのは、昨年の九月十七日のことだった。その時のたのしい思い出はいまもわたしの胸にのこっている。外国の友人の家に客となっているという気持ちはまるでしなかった。田辺先生のお住いは、仕事熱心で質素な学者にふさわしいものだった。先生はたくさんの民族楽器を集めておいでだが、そのなかには、鹿の頭の形をし、弦巻(いとまき)は鹿の耳にかたどった琵琶(びわ)のようにひじょうに古い時代...
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田辺尚雄先生のお宅におうかがいしたのは、昨年の九月十七日のことだった。その時のたのしい思い出はいまもわたしの胸にのこっている。外国の友人の家に客となっているという気持ちはまるでしなかった。田辺先生のお住いは、仕事熱心で質素な学者にふさわしいものだった。先生はたくさんの民族楽器を集めておいでだが、そのなかには、鹿の頭の形をし、弦巻(いとまき)は鹿の耳にかたどった琵琶(びわ)のようにひじょうに古い時代...