大海原にぽつんと浮かぶ小島。遠い水平線のかなたには遼東半島が青くかすんでみえる。日夜岩をあらう黄海の荒波が単調なリズムをかなでている。地図にもしるされず、地方誌にもその名をとどめぬこの島を人よんで「黒島」という。面積一平方キロにすぎないこの小島に、三〇戸あまりの住民がすみついて、先祖代々漁業をいとなんできた。だが、かれらのなかで、「魚」という字のよめる者はすくなかった。一九四五年八月、旅大(リユイ...
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大海原にぽつんと浮かぶ小島。遠い水平線のかなたには遼東半島が青くかすんでみえる。日夜岩をあらう黄海の荒波が単調なリズムをかなでている。地図にもしるされず、地方誌にもその名をとどめぬこの島を人よんで「黒島」という。面積一平方キロにすぎないこの小島に、三〇戸あまりの住民がすみついて、先祖代々漁業をいとなんできた。だが、かれらのなかで、「魚」という字のよめる者はすくなかった。一九四五年八月、旅大(リユイ...