十一「ぼくをのこして欲しい!」一九四八年八月はじめのある暑い日の午後、交通大学の校門の右手にあるレンガ建の小さな建物のなかでは五、六名の若者がいそがしそうにたちはたらいていた。穆漢祥(ムーヘンシヤン)が交通大学民衆夜学校でまなぶ労働者たちといっしょに明日『平民報』を出すその仕事にとりかかっているのである。作業服のズボンに開襟シャツといういでたちの穆漢祥はどうみても労働者そっくりである。彼は机にうつ...
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十一「ぼくをのこして欲しい!」一九四八年八月はじめのある暑い日の午後、交通大学の校門の右手にあるレンガ建の小さな建物のなかでは五、六名の若者がいそがしそうにたちはたらいていた。穆漢祥(ムーヘンシヤン)が交通大学民衆夜学校でまなぶ労働者たちといっしょに明日『平民報』を出すその仕事にとりかかっているのである。作業服のズボンに開襟シャツといういでたちの穆漢祥はどうみても労働者そっくりである。彼は机にうつ...