揚子江をくだる

船が岸壁をはなれた。重慶（チユンチン）ら揚子江（ヤンツーチヤン）をくだる楽しい旅がはじまつたのだ。港はうす霧につつまれて、だんだんかすんでゆく。そのうちに船がぐつと大きくカーブをきると、まつたく新しい景観が目の前にあらわれた。はるか彼方には山々が連なり、空には白雲が浮かんでいる。うす日のもれる岸辺には果樹園がつづき、木木は枝もたわわに実をつけている。江水は滔々とながれ、わたしたちの乘つた「荊門（チ...