甲は名うての馭者。乙は甲について馭者のわざを学んだ。学びはじめてから間もなく、乙は甲に腕くらべを申しこんだ。三回腕くらべをし、その都度馬をとりかえたが、いずれも乙の負けにおわつた。乙が甲に言つた。『あなたはよく敎えてくださらなかつた。ここというところをかくしておられる。』甲が答えた。『いや、わざのことなら、何から何までわしは敎えた。お前さんが負けたのは、わざのうえでわしにおよばないからではない。わ...
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甲は名うての馭者。乙は甲について馭者のわざを学んだ。学びはじめてから間もなく、乙は甲に腕くらべを申しこんだ。三回腕くらべをし、その都度馬をとりかえたが、いずれも乙の負けにおわつた。乙が甲に言つた。『あなたはよく敎えてくださらなかつた。ここというところをかくしておられる。』甲が答えた。『いや、わざのことなら、何から何までわしは敎えた。お前さんが負けたのは、わざのうえでわしにおよばないからではない。わ...