中華人民共和囯の皆様:
中華人民共和囯の勝利に心から祝意を表します。私は日本の平和代表として招きを受けながら北京の平和会議に出席出来なかつたことを本当に殘念に思つております。あの会がいかに平和的な雰囲気の中に、いかに言論の自由が尊重されたかは、世界の多くの人達が認めているところです。
私たち日本人は中囯の人びとと手を結んでゆきたいと心から思つております。今まで植民地として、しいだけられてきたアジア民族が、今やその苦悩の中からつきない力をくみ出し、すばらしい発展を遂げつあります。私は去年「白毛女」を観ましたが、日本でも、すぐれた映画が独立プロダクシヨン等によつて作られております。沖繩の女学生の悲劇を描いた「ひめゆりの塔」、一炭坑婦のすばらしい成長を物語る「女一人大地を行く」、日本軍隊の非人間性を衝いた「眞空地帶」等。「女一人大地を行く」はたんこう労働者一人三十円の居金に四つ手作られたものです、このような映画を中囯の人々にどうにかして観ていたゞきたいと思つております。
歷史は人間のエネルギーを無知と病苦と貧苦の撲滅にそがれるべきだということを敎えていると私は信じます。
あゝもうすぐですね、中囯の皆さんと世界の人々と共に手を握りあつて、人類が今までに築きあげた文化の恩惠を全ての人々が差別なく受け、生きているということを健康に楽しむことが出来るのは。
中囯の皆様に親愛の情をこめつゝ筆を置きます。
東京 赤松俊子
(英語版の手紙)