黒山頭から室韋鎮(鎮は町)までは百キロあり、一日おきにバスが一便出る。この日、私は夜の明けやらぬうちから待って、やっとすしづめのバスに乗り込んだ。エルグン河の流域には、中国とロシアの混血児が沢山散らばっているが、室韋鎮にはその子孫が比較的まとまって住んでいる。バス道路の両側をふさぐ山がだんだん高くなり、立ちならぶ白樺の木が車窓をたたきはじめると、私の耳にあのロシア民謡の激しくも哀愁に満ちた調べが聞...
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黒山頭から室韋鎮(鎮は町)までは百キロあり、一日おきにバスが一便出る。この日、私は夜の明けやらぬうちから待って、やっとすしづめのバスに乗り込んだ。エルグン河の流域には、中国とロシアの混血児が沢山散らばっているが、室韋鎮にはその子孫が比較的まとまって住んでいる。バス道路の両側をふさぐ山がだんだん高くなり、立ちならぶ白樺の木が車窓をたたきはじめると、私の耳にあのロシア民謡の激しくも哀愁に満ちた調べが聞...