一九五四年の冬、わたしは仕事のため初めて北京に来た。「老北京」を自称する二人の同僚が、歓迎会を開いてくれるという。喜んで一も二もなく応じた。どこでご馳走してくれるのかしらと思ったら、ご両人はためらうことなく、北京城内宣武門近くの「烤肉宛」を選んだ。木綿の防寒用のれんをくぐって、店内に一歩足をふみいれると、おいしそうな焼き肉の匂いが鼻をついた。あたりを見回すと、お客は座って食べるのではなく、大きな酒...
Please login first!
一九五四年の冬、わたしは仕事のため初めて北京に来た。「老北京」を自称する二人の同僚が、歓迎会を開いてくれるという。喜んで一も二もなく応じた。どこでご馳走してくれるのかしらと思ったら、ご両人はためらうことなく、北京城内宣武門近くの「烤肉宛」を選んだ。木綿の防寒用のれんをくぐって、店内に一歩足をふみいれると、おいしそうな焼き肉の匂いが鼻をついた。あたりを見回すと、お客は座って食べるのではなく、大きな酒...